パソコンやテレビを買う時は、他にも同じような物がいっぱい売られており、また購入する機会も何回かあるため、一般市民でも販売商品の価値をある程度は判断できます。ところが、住宅の場合は一生に一度の買い物であるため、その物の価格の妥当性が見当付きません。ましてや、中古住宅の場合は、販売業者の説明を信じるしかありません。
そこで、2016年に宅建業法が改正され、2018年から中古住宅の売買において「インスペクション」が推進されています。
インスペクションの利用
インスペクションというのは専門家(インスペクター)による物件の現況評価のことであり、以下のことが媒介業者に義務付けられています。
- 媒介業者は売主または買主と媒介契約を結ぶ際に、「インスペクション業者へのあっせんの可否」を書面で示します。
- インスペクションが行われた場合は、その結果を重要事項説明時において買主に伝えます。
- 売買契約時には建物の現況について、売主・買主双方が確認したことを証した書面を交付します。
媒介業者は売主・買主から依頼を受けた場合はインスペクション業者を手配し、建物の基礎、外壁などの建物の構造耐力上主要な部分の調査、及び雨水の浸入防止部分に生じているひび割れなどの劣化、不具合の調査を行わなければなりません。
インスペクションの役割
インスペクションの結果が購入判断の材料となり、売買価格の決定にも役立ちます。さらに、売主・買主がお互いに建物の状況の確認を終えてからの取引になるため、売買後のトラブルの防止にもつながります。
インスペクション業者への斡旋
媒介業者はインスペクション業者の斡旋可否の提示はしなければなりませんが、インスペクションの実施を義務付けられているわけではありません。あくまでも、実施した場合にその結果の説明を義務付けられているだけです。つまり、売主や買主からの要望がなければ、インスペクションをしないということが認められています。
インスペクションの効果
インスペクションの検査方法は基本的に目視や触診、通水などの非破壊検査による簡易的なものでしかないため、耐震性や省エネ性能を判定するものでもなければ、建築基準法令に基づいた設計図書通りの建築を保証するものでもありません。
そのため、購入後に瑕疵が判明した場合の改修費用を補償する「既存住宅売買瑕疵保険」が用意されています。
インスペクション制度の活用
以前からインスペクションはありましたが、認知度が低かったため、より広く周知させることで中古住宅の流通促進を図ることが今回の法改正の目的です。消費者においては最も高額な買い物であることから、不利益を被らないような対策を採ることが重要です。ちなみに、インスペクションの費用は通常5~10万円です。